パルファム
濃厚で憂鬱な死と夜の香水に浸かってみませんか
さそう 手 が縺れる 首を絞めようと
伸ばしては 私の方から突き放す
おまえの香りは好きではないと
しかし この香水に
全身・つま先までどっぷりと
浸かっていなけりゃ わからん感性があって
きっと君は 親切心に それを教えてくれたのだな。
ああ、好きさ。もちろん、好きさ。
どうして、その香水は、
私が昔、つけていたものだから。
踏み切りの1歩手前に並ぶ足、
信号と横断歩道の隙間の足、
真夜中3時のキッチンで、
包丁を持ち揺れる人間の足、
それらすべて、正体は、
“濃厚で憂鬱な死と夜の香水”を頭から被った、
私である。
もう、捨てた感性を、
もう、捨てた思い出を、
二度と、思い出させないでくれ。
彼女は泣いていた。
その涙すら瓶に溜まって、
いつぞやか、香るのだろう。 ふんわりと。
月夜の晩に、彼女と私は、
お揃いの香りを振りまいて、どこへ往こう?
TOP