有情階段から

セピアに褪せた世界のフィルターを、
もう二度と取り替えることはなく。
そのまま、ビルの誘導灯を辿って、
一段一段、天国に近くなる。

あたしは罰当たりで。
これから行くのは地獄なのだ。
たばこの煙が目にしみた。
ストッキングと、靴を脱いだら、
髪を解いて、最後の酸素を吸い込む。

冥土の土産に、子守唄を歌ったら、
風が私の体を抱いたので、
お母さん、と呟いてみた。

19/12/23 10:31更新 / ヨルノアサヒ
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