白い鎮魂歌

送電塔が重なって、夜空のカーテンを引っ張るように沈んだ。
世界は終わるんだ。ようやく解放される。
私は手に持っていた缶コーヒーの1口目を流し込み、目を閉じる。
空からミサイルが降ってきて落ちた。
大地は荒れて、大きな太陽が欠けた日に、
ひとりぼっち、透明な私はがらくたの山の頂上を目指す。
誰も彼も、もう私を認識する事はできない。
なんだって出来る。あの遥かな雲の上まで行ける。夜空の星を両手で掬える。
世界の裏側まできっと1秒間…
目を開けた。飲んでた缶コーヒーがいつの間にか空っぽだ。
自販機の光がまぶしくて目が眩む。

「安心して、世界は今からでも、終わるから。」
吐く息が白い。陽が傾いて、盲目的な夢に落ちていく。
苦くて酸っぱいコーヒーが、そういって私を慰めていた。

19/12/23 10:19更新 / ヨルノアサヒ
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