衛星より
なにもない場所にいる あたし
ほらみて 脳みそが白いでしょう
さらさらとした月の砂漠の
夜は寒い
きゅうくつな絨毯に挟まり
ターバンで巻いたあなたの顔は見えない
地鳴りがして
おばけがきた
この世界に
やるせないでしょ
どうにもできないでしょ
懐に短剣もあったはずだけれど
もうそれはとうに とっくに
錆び付いているようで
なにもない なんにもない世界
無数の眼達がわたしを突き刺していく
うん、まあ、そうさ
何だってタネはある
俺の手品だって 君を騙すため
たくさん撒いたんだ
うっかり騙された方が悪いのか
喉が潰れるまで叫ぶこともできないの
ほら 見えないの
腕に付けられた枷が
違和感だって押し殺して生きてきたわ
素足で飛んでいた
これはたった1度きりのおねがい
この世界にわたしを足して
朝日が昇るのを
もうずうっと
待っている
夜風が目に染みたのか
わたしは月の上にトルマリンの雫をこぼして
眠りについた
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