贈り物
ふざけた色のリップを捨てた。
あたしが縛られていく、あなたに、常識に、
狭い。狭い。狭いこの街に。
涙の跡で、頬がヒリヒリと痛んでる。梳かしてない黒髪はぼさぼさ。
助けてといったあたしの声は、白い部屋の隅に反響して泡みたいにふわりと消えた。
あなたに貰ったものなんてもう色あせて価値なんかわかんないわ。
重苦しい酸素が私の胸にのしかかる。
しばらくこのままで居させてくれ。
などと思っても時計は、厭らしい音を立てて進む。
昼間の叫び声がまだ耳の中で生きてる。途切れそうな意識を繋ぐのは、それと縦長の四角、漏れるブルーの光、さっき飲んだ苦いコーヒー。
また枕を濡らした。
世界の中で私だけが透明でいるみたいで、それでも、今日だって明日だって綺麗な綺麗な朝日がへばりついた暗闇を溶かしていく。
まだ私は、夜にくっついていたいのに。
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