祈念
白壁のそこらじゅうを
張りつく蛸のすがた
我が眼のように
しづかな夜更けに
九つのたましいと
月に吠える猫の尻っ尾が
手錠をやわらかく撫でる
腕をひく 恋をした彼に
誰よりも心を寄せゆうらりと融ける陽に
夜の区別さえ付かず酩酊
遭難する時計は腕より控へめの輝きをもち
裸の足で固めた路ゆく
手を繋ぎおるがんの音を想い出して色をなぞる
爛れた女になったわ。
それでもこれを純愛と呼ぶのならば、悪くはないのだらう。
夏の思ひ出は犯される
ひりひりと焼け付くような皮膚に
あなたはゆっくりと触れてエタノールを塗る
甚くしみるあたしを見て
綺麗と口紅を引いてください。
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