駆けてゆく

走れ走れ走れ走れ!
あなたは止まっちゃあいけない

霧立ちこむる朝
鴉は鳴かない
昨日食べ潰した柘榴が
恨むような目でこちらを見ている

いつもと違うくうきのにおいに
私は少し息を切らしていた



信号が黄色から赤になる瞬間
わたしが歩道を切って歩く
「とまれとまれとまれとまれ!」


「吐き気有、体調不良」


ひとりぼっちの
白いシーツの上
だき抱える自分は
なんて幼いんでしょう。

孤独な自分を
また、広い両手で包み込み
あたたかさを分け合う
そのような人が
何故いないんでしょう。

手足の先はまるで
血が届いていないようだ
吐き気を飲み込んで
自分は白いシーツに
沈んでゆく 沈んでゆく

20/10/30 02:19更新 / ヨルノアサヒ
作者メッセージを読む
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c