天使が来る
かわいた空気がひんやりと
こごえる白い家の中
かけっぱなしのラジオから
知らない曲が流れ出し
誰もがそこに居ない時
こっそり天使が落ちてくる
天使は僕の知らぬ間に
キッチンで少しのいたずらをして
ママのティーカップで紅茶を飲み
その後はこっそりと 何事も無かったかのように
冬の土を裸足で踏んで 空へと帰っていく
僕たちは天使の羽からこぼれた光だということを
生まれた時からなぜだか知っていた
顔さえ知らないあの天使が
僕を優しく包んでいたことを
心臓の記憶で知っていた
焼き菓子の残り香があたたかい
空を見上げると雲の隙間から
ちょうどきらきら光が漏れて
天国への扉が開いているようだった
冬になればまた 誰もいない白い家に
天使がやってくる
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