デザァート
ワルザザートとシバームの夜明け
とてつもなく親水な かわきなるデザート
昼下がりの親子
トボトボススム
ローブをすっぽりとかぶった二影
乏しげな茶みしげな 肌の浅黒い
母さんとぼうやが 趺蹟を印しながら
沙漠を越えていく
砂紋風紋ああらさらあらと指股から
墓かめがけこぼれ散る舞う きんの波
『おかあさん、お水ください』
ぼうがせがむ
はははよごれた筒をだし仔の轡に充う
たいせつにたいせつに含くむんだよ?
ははは噛んでふくむように砂砂やき
やがて動けなくなった
じしんのともしびがもぅ盡る前だった
それなのに筒のなかを衞もった
仰向けになって母は仔に
今際のひと言とを語った
母の體を捌いて持っていくんだ
さすれば母はいつもあんたといっしょ
ホネをたてて墓標にしてね
し ん
ひとりになった仔は弔らいをおえると
ははのおしえのとおり
またあるき出した
狡猾な 蠍だけが それを見上げていた
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