氷柩



さいはての

凍りついた海で

何万年も前に凍死したであろう
少女の遺体に遭った
ほりの深い顔立ちは
古シベリア語族民かとおもったが
みにまとっている服装が妙に違う
調べてみると地球上には存在した
ことのない謎の意匠文字が腕に
印るされていた
「宇宙からの旅行民か!」
わたしのあたまは豪勢に踊り出した
長期保存された遺伝子レベルを
分析すると染色対数と塩基数は
今の現代地球人種とほぼ変わらない
一方で合計46本の染色体が宿す塩基
総数は30億対から若干少なかった
しかしもし彼女の一族が我々現人の
祖先の一系だとするなら発想次第で
ツパイやヒヨケザルの仲間らと我々
霊長目とのはざまにパカッと空いた
the link to be であった可能性の仮説
も大いに提げすちょなぼぉなのだ
おお なんという時空を素索する浪漫
やがてわたしの頭部は異星民かもし
れない睡眠聖女とコイナカになった
自分の腕は学者として刃やドリルを
もち彼女の繊維組織を切除したり
してるのに脳桶がそんな可哀想な
諸行はよせとハゲシク 抵抗するのだ
わたしはやがて狂るった
この世紀の発見に封をし
ほかに知るひとのいないまま
謎は謎のままで真実を墓場までもっ
てゆくことにした
「ふたりっきりだね。いこうよ」
「ええ」そうエアーダイヤログを
孤とりでくちずさみながら彼女を
マイカーの補助席に載せ凍る直前
の北極海に面した崖の上で
アクセルをふみ謎を庇ばってくれる
永遠の国にむけて一歩を踏み出した

数年後の夏引き揚げられた2つの
遺体を後世の連中がどう鑑定した
のかはまったく興味がない




22/12/19 03:52更新 / OTOMEDA
作者メッセージを読む
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c