水中花に会った日
都市近郊のどこにでもある渠(おがわ)
であるあさ おれのみつけた女性の
ZENRAITAI
年の頃は18から22といつたとこか
花もシタタル芳ぐわしい若気である
第一印象は青い水中花
水面からむきだしの環いお尻だして
ぢ っとうごかず水没していた
小雨がやさしげに死に伴う穢がれを
洗いながしてあげているようだった
水の中のかおはみえず最初は仰向け
におこしてみようとも考えなかった
定番の美少女フェースじゃなかった
らとんだ興ざめだからね
ただ髪がツインテールだったのには
ちょっとときめいた
しかも水面下にみえる二の腕や脹ら
はぎが運動選手のように引き締まり
がたいが大きくおれより背がたかい
えっえっなんでまたツインテちゃん
のこんななきがらがおれんちのすぐ
近所にながれついたの!とまず驚いた
そうしているうちに渠に棲む鮒なや
水生生物たちがたくさんあつまって
死体子ちゃんの肌の細胞をぱくぱく
啄いばんでいるのに気がついた
うーむ これでは死体が可哀想だ
よーし おっぱらってあげようか
おれはへんな気おこして渠の
なかに沓のまま脚を浸からせ
えいえいと活躍してみた
死体ちゃん 翔らからこれ視てる?
すこしはこんなおれほめてくれる?
「うーむ。近くにはだれもいないし
ちょっとだけだったらいいよな」
おれはしろうと探偵気取で指を嘗め
少しためらいながら尻おもてにさわ
ってみた おもったより固い
「死後十時間くらいってところか」
いや とくに根拠はない
ただ 言ってみただけだ
そうそう 遺体の状態って目の下の
死に隈や瞳孔具合が重要だよな
おれは拳をつくって心臓の真上を叩
き一褌気合をいれたが結局恐る恐る
と死体子の肩をつかみ表に反えして
しにがおと対面しようとした
ーーー★★★ーーー★★★ーーー
「それであなた、関係者でないなら
なぜあんなところで死亡者の身体を
いじっていたんだね」
その日の夕刻おれは最寄りの署の取
調室のデスク前にぽつこんと座って
警部補さんから詰問を受けていた
デスク上にはお馴染みのカツ丼が
ぽっかぽっか湯気を揚げている
いや だからおれは第一発見者って
やつ どうして参考人となっていて
いえへ帰れないんだ?
まあ 近隣の住宅街を潤す渠では
いまもむかしもさまざまな關れた
芝居がまいにち何か生成っており
退屈する非間がないというお話だ
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