鈴が森詣で
私は馬にのせられ烏森から鈴が森へと搬送されてゆく
市中引き回し それが今日私が賜わった罰則のひとつだ
またがっている獣背の祁ざわりが渠にささってちくちくするのに緊縛されててみうごきひとつできない
罪びとだからきものも着せてもらえず早春の冱めたい風に身が堪たえる
途上でとおりかかった芝の町家筋の路端から『結命!おゆめや。あっちにいってもしっかりおし!とうさんによろしくね!』などとかあさんの聲えが聴えたがすぐ背ろに褪えた
罪の大きさやおもさなんてよくわからないけど私ってそんなにわるいことしてた?
たしかにおとといこころもちほんのすこし魔が差して店先の簪ふところいれたけどそれがこうなったつみ?こんなのよそうとかできなかったよ!
『かわいそうにねまだ一八のよわいだってのに』『お奉行さまはあせってらっしゃるから』
そんな老女たちの聲えもするがたいがいの衆は私の肉づきの出入りのほうに視線がはりついてるみたいだ
はずかしいよ!見ないでどうか見ないで!
『いやいや所詮はミセシメだから』
...店閉め?なんのこと? 頸を擡たげてみたけどいまの私の立場に大事なこととはおもえない
よし!羞ずかしいけど泣かない
けっして最後までなかない
鈴が森ついて磔けされて
白刃照かる槍をかかえた若い刑吏が申し訳ていどに下からささやいた
『お乳の腋きからこうナナメに点いて入れるけど こうするのはくるしくないから、あっとまにおわるから』
私はそれを信んじてほほ笑みかえした『ありがとう、おしえてくれて。こんな酷い私に気をつかってくれて』すると若者はばつのわるいかおをした
そしてそのとき きた『はをくいしばってね、いくよ』謂われるとおり、はを喰い搾ってみた すこしだけキモチが輕るくなったきがした
あ っ
下からニブイ厭なおととドンツウ 熱つが恐そってきた 洟がっぅーんとして咽どから何かきた そういったことがめくるめくるように忙がしく発こった そして スゴくな っ た
嘘つき! .......ウソツキ
あしたこのへんとおる薩摩と長州の行列 みたかった な ぁ
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