茗溪から龍岡門へ
三四郎や林太郎や太宰の畳ずんだ空気すって
背中幸せになりたくて
桐杏府の大学に入った
本郷や西片や駿河台を鰓らんだ
専門書捜しに頻りに亘ったひぢり橋
雨に霞すみ咽せぶニコライ堂
すべて今では追憶のなかのみの所産
ウラジオストックからきていたナタアシアがかけてくる
ぼくらは文学学士だった
彼女はラトビア情勢専攻
ぼくは歴史的趣向変遷の高察
古びた学舎もチャペルにも絡まる伝たまで
賢人のようホグワアツにいる助教授のよう
ああ きょうは叶のじょやイ・ジョンヨル君らと
六義園の築山や小池畔りを纂索したあと
根津の祠や不忍辮天で参詣清まし
染井吉原そばの屋台で焼売でも爪もうか
焼酎『六調子』灌そいだ盃 かたてにね
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