断面のマジック
「わたしの出口みてみます?」
いきなり前触れも鳴く
たくさんの穴を突きだされて
おれは錯乱した
むっと鼻をつく刺激臭
おもわず咳こんだおれ
いやなにこれ グロいんですけど?
「ほらサワってみて?鮮ごいでしょ」
たしかにこれははじめて目にする
わあるどである 帯びただしい窟が管
へとつながっている その先では脈が
脈脈くとかのじよだけのこゆうの
オンガクを肥ゆるりと哀でている
『わあ……』
おれはもう聲も出ない ただの聾唖だ
演奏家のかのじよは眼を見開いた儘
往ってうごかなくなったおれの前に
立ち尽くすと はぉ……とため息をつき
おれの眼前に突きつけた蓮根の断面
をもったままいつまでも永めていた
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