じじいは心配性
じじいが亡がらとなって戻ってきた
ぶきっちょで何をやっても一向に旨くいかんとぐちってばかりいたじじい
幼少の砌りは宇宙飛行士を目指して
いたと箸のさきで目刺を鋏みながら
語ってたこともある
とにかく夢だけ満載で実行力の全く
伴わない口先だけじじいだった
ときどき理由もわからずキレて
路の真ん中で回りいるひとたちに
当たり散らしていた
公害ならぬ輩害に認定しろよと
冷ややかに嗤らったものだ
『なあたつぼう、こんないやな
ことばかりの世の中だったが、
わしにもお次の人生ってのが
あって今度こそ真っ当に他人の
ためになる仕事ができるのかな?』
これを聞いておれははじめて
じじいが心配性で胆のちっちゃな
奴だったんだなと同情を憶えた
その次の朝唐突に息をしてなかった
コロナ禍はこんな新しい未来に不要な人達をどんどん掃除していくよな
って ありゃ?!
おれにもぐちぐせが伝染してるじゃないか
ん? なんだ? この感覚は
おやっ?まさかワシはたつぼうの中にいるのか?
……じじい 勝手に押し掛けてきておれのなかに同居するなよな
何んの おぬしは二人分の人生経験を
使ってこの先の失敗確率を下げられるんじゃぞ?
お得な大福引大当選じゃ かっかっか
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