ロストミレニアムトゥリイ
わたしはスカイツリー
白堊の殿堂 白鳥なる貴婦人である
21世紀初頭に推参して以来
凛 として ニイドルがどこまでも
深いてんくうを突き つらぬき
無言のアイドルとして君臨した
業平の地から 雲間を透して
都会のビルビルのはざまの
民生の有象無象をみまもってきた
いつも凡てが眼下に横たわっていた
すこし離れた先にはいつも彼がいた
赤いテッコツのしるえっとの彼
タワー
前世紀にはわかく輝かしかった
彼も世紀またぐと老成感ましまし
さすがにくたびれた風情まとうが
それでも神んとして 嚴んとして
下町を首護していた グリモワール
があるとき 街が入れ替わった
北から招かれざる弾団が飛来し
眼下は一様に緋色に染まった
それはそれで うつくしかった
ある種のホロビという名の美
気がつくと街を潤していた川は
干 上 がり
大地には廃墟だけが累累と陳列
めにはいる視界には 偶然にも
壊れ損なった自分と 上半分を
持ってかれ下半分だけ生延びて
傾いた彼だけが残った
そうやって 一万年位がすぎた
嘗てここに営み築いていた私の
コンストラクターたちは一体
どこへいってしまったのだろう
とめどもない思索に耽りながら
放射能も消えた末世の風の掌に
慰められつつ つぎの始まりの
日をまちわびるアーティファクト
スカイツリーであった
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