ロストミレニアムトゥリイ




わたしはスカイツリー

白堊の殿堂 白鳥なる貴婦人である

21世紀初頭に推参して以来

凛 として ニイドルがどこまでも

深いてんくうを突き つらぬき

無言のアイドルとして君臨した

業平の地から 雲間を透して

都会のビルビルのはざまの

民生の有象無象をみまもってきた

いつも凡てが眼下に横たわっていた

すこし離れた先にはいつも彼がいた

赤いテッコツのしるえっとの彼

タワー

前世紀にはわかく輝かしかった

彼も世紀またぐと老成感ましまし

さすがにくたびれた風情まとうが

それでも神んとして 嚴んとして

下町を首護していた グリモワール





があるとき 街が入れ替わった

北から招かれざる弾団が飛来し

眼下は一様に緋色に染まった

それはそれで うつくしかった

ある種のホロビという名の美

気がつくと街を潤していた川は

干 上 がり

大地には廃墟だけが累累と陳列

めにはいる視界には 偶然にも

壊れ損なった自分と 上半分を

持ってかれ下半分だけ生延びて

傾いた彼だけが残った

そうやって 一万年位がすぎた







嘗てここに営み築いていた私の

コンストラクターたちは一体

どこへいってしまったのだろう



とめどもない思索に耽りながら

放射能も消えた末世の風の掌に

慰められつつ つぎの始まりの

日をまちわびるアーティファクト

スカイツリーであった






21/06/18 07:05更新 / OTOMEDA
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