儂っ娘と夙成
ジジイコトバで噺なす嬢が殖えてる
俺の上の娘の松輪もそのひとりだ
得てして老成を粧い本音を匿くす
もちろん稚ないころはそうじゃなかった
でもある切掛けで自分をライズアップし
未熟な自分を詐わりたくなったみたいだ
それまでの自分に厭気が刺し
懸け離れたキャラに自己を擬らえ演じて
みたくなる心境も思春期に特有の
一反抗期形態の顕らわれと言えるのかも
しれない
でもいったいなにがあった?
愛するオトコに翻弄ばれ裏切られたか?
オトメの純真に不信を抱いたか??
父としてはすごく気になる
「なぬ父上よ。そんなに心労を重ねる
ことでもないぞ。ただの戯れじゃ。
はっはっは」
おいおい辞めてくれ松輪
おめえは俺のオヤジか?
死んだおめえの祖父母も先祖代代の墓石
の下で顳かみを抑え厭きれてるぞきっと
それでも噺なしを聴くに彼女の直感の
鋭利さやキクバリ、面倒見の良さは
クラスメートらの不安を宥め心の支え
となって多くの支持を捉えているよう
するとそれを察がめていた妹である
下の娘の真日野がこんどは花魁コトバ
の噺い手に替わってしまいやがったよ
「姐ねさま。内チにはそないな器用な
活き方はできまへん。内チは内チらし
ゅう活きてゆきますどす」と言い棄て
謳たいながら一人暮らしを始めて自立し
夙成しちまいやがった
おい関東人だろおめえも 面白いからって
「ぬう。いもうとよ。つくづく姐を頼よ
らぬじゆう闊達つな奴じゃのう」
じゃのうじゃない 溌溂はどうした!
若さの特権は! 生気岐け授えた俺に返せ
うう 姉妹の契りの酸いや濃薄すは父たる
俺の理解にも余る 不可触の 禁制沼 だぜ
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