潺らぎ、それって歳時記の額ぶち
近所の住宅街のはずれ
丘の梺にある小川
このせせらぎ遊歩道は
四季の移ろいを語り
歳時記を眩しく映しだす人工の額縁
大いなる という修飾詞のつく河を
厳密に模した縮図(ミニアチュア)
もちろん自然そのものじゃなく
『庭園創作』の概念のもと
ひとの尺度と意匠で
加工された疑似自然であるけども
設つらわれたみぞにながれる
透けた水は流れを留めず
途中に顕れる小カスケイド
からはシブキと雫が跳ね
ツツジ、アジサイなど折々の
花卉たちがわれこそ主役と
競演を繰り広げる舞台と霞す
そして 季節が熟してくれば
この狭い回廊にはおのずから
むかしニュータウンと呼ばれていた
時代にここに営み築いた
じじばばが
どこからともなく涌きだし
蒸れてともすると三密状態になる
すこし昔にいくらでもあった里山が
最近はよほど遠方まで
揺られてかないと邂逅うことも
難しい世に
変貌ってしまったけれど
近所のせせらぎはいまだそこに住み
しんでいく土壌に根づいた
じじばばの
心象の基盤風景を象っているのは
間違いないのだから
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