秋の呼び声

街ではハナミズキが
真っ赤に染まり
つややかに光る実が
秋の歌を歌う

駆け足で過ぎる日を
追い越すように
冷たい風は吹くままに
もう次の季節の匂い

去年より早く移ろう景色
今すぐおいでよと声がする
懐かしいあの山が
一緒に歌おうと呼んでいる

かくれんぼから手招きへ
待ってる待ってるからね
雲の合間から下りて来た
誘いの風が吹き抜ける

見えない手を掴むように
私もそっと伸ばしてみよう
やさしい自然に抱きしめられた
あの頃に帰りたい

嬉しいときは華やいで
さみしいときは慰められて
年を取るほど足が遠のいた
だけど今も友だちだよね

楓が揺れる花のように
銀杏が飛ぶ鳥のように
輝きに満ちた世界は間近
もうすぐ会いに行くよ

待っていてね美しい秋
思い出のもみじの道
靴紐をギュッと結んで歩いてゆくよ
眩く輝く紅と金のあの山へ







25/11/01 08:00更新 / 香弥
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