花冷えの道で
つめたい小雨がそぼ降る空は
色もなくて光もなくて
見上げて立ち止まった
花冷えの道
ゆっくり膨らむ蕾が
あたたかな陽を待ちわびて
満開を望む
今は静かな桜の道
少しずつ広がる薄紅色が
並木を染めて濃くなって
風に吹かれひらひらと
落ちるその時まで
できるだけ来るから
幾重にも重なる花びらが
空を埋め尽くす世界を見せて
遥かに続く花の波濤を
いつ咲くかはわからない
散ってゆく日もわからない
人と同じ
誰にも誰にもわからないから
だから見たい
そのはざまで輝く光を
その姿を焼き付けて
春をこの目に焼きつけて
また歩いていく
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