蝶
嵐が通り過ぎました
失くした私を慰めに
胸の上に手を置いた
夏は私をつれ去って
還らぬ場所へと消えてゆく
あまりに熱くて止めた息
幾つもの豪雨の夜に晒された
私の思いは黒い蝶
悲しい空洞を確めて
流した涙を拭いましょう
かつて春を失くしたように
夏の私ももういない
自分を抱き締め別れを告げて
晴れた朝には新しい
命のふりで目覚めましょう
強すぎる日差しに枯れた花さえも
涼風の調べに息吹を取り戻す
ゆっくりと渇いた土に隠された
己の根源を育てよう
同じ花でなくてもいい
姿や形が変わっても
やがて来るやさしい秋に導かれ
蕾はあまた花開く
そのとき私の胸に宿った蝶は
放たれ空へ飛ぶのだろう
光の中で
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