彼岸日和2
坂を上り階段を下りて
小路を抜けたら辿りつく
一番端の小さなひとすみ
あなたが一人眠る場所
古びた寺の裏山は
にぎやかだったあなたには
静かすぎて淋しいね
久しぶりに晴れて今日は青空になった
見下ろすと今歩いて来た坂道
私たちの姿が見えたかしら
花を供え持ってきたお茶を注ぐ
いつものように一緒に飲もう
並んで手を合わせると線香の煙が
風に舞う
もう何度目になるだろう
こうしているとまるでお芝居のよう
おかあさんがいないこと今でもやっぱり
嘘みたい
私たちのこと見守っていてね
白い墓石を撫でてささやいた
みんなまた年をとって
孫たちは大きくなったよ
おとうさんは来ないのよ
欠かさず来てたけど
この頃とても足が弱って
急な階段はもう無理だって
おとうさんのこと守ってね
一人ぼっちはさみしいだろうけど
まだ迎えに来ないでね
誰よりも長生きしてほしいから
祈りながらふと思う
父を支えているのではなく
本当は私が支えられているのだと
父がいる それだけで私は
まだ娘でいられる
そろそろ行くね 別れを告げ
階段を上りながら振り返ると
小さな墓の向こうに秋空が見えた
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