月を愛でる
月を愛でる
楽しみにしていた十五夜
ゆっくりお月見しようと
早めに用事を済ませベランダに出た
ウキウキと月見団子と
飲み物を用意して
小さな椅子に座る
見上げると月は先程までの雲が切れて
中秋の名月の名に相応しい
美しい姿を現している
くっきりとした丸い光りの中に
うさぎがいて横顔と長い耳がある
目を細めると満月の下から光りが伸びて
ベランダを越え真っ直ぐ私に届いた
月は私の正面で金色に輝き
やわらかな力を降り注いでくれる
ふとこんなに楽しみに月を見たのは
初めてかもしれないと思った
いや 見ようと思ったこともなかったかも
昼も夜もバタバタと余裕がなく
いつも誰かに呼ばれていた
今はこうしてベランダにずっといても
誰も邪魔しない
ちょっと来て月まだ出てる?とか
良かったねと言ってすぐ引っ込む
そっとしておいてくれてるみたい
前から中秋の名月を見たいと言ってたからかな
月を愛でる
ただ愛でる
そんなことが出来るようになるほど
時が経ったんだ
じわりと自分と家族の年月を思う
1時間ほども見ていただろうか
そろそろ入りなよ
風邪引くよと
声がかかるようになった
うん入るよと言ってもう一度満月を眺める
なんだか月も私をじっと見つめている気がした
長く見ていたのに名残り惜しい
ありがとう またね
また来年会いましょう
約束だよ
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