春の私はもういない
春
私は空に溶けていた
風に包まれ守られていた
花と過ごし安らいでいた
あの春の私
驚くほど敏感な私はもういない
あの頃感じた自然の豊かな力
眺めるたび 触れるたび
たゆまず命を吹き込んでくれた
自然との一体感はもうない
畏怖すべきあの感覚
あれはあの時だけのものだった
私はただの私に戻った
元気になれば鋭かった感覚は
鈍くなるのだ
今 私はもう春の私ではない
そうであろうと思っていたとおり
花たちと共有したあまりにも濃密な
時間は終わった
あれほど凪いで穏やかだった心も
この頃は日常の中で絶えず波立ち
浮き沈みを味わっている
苛立ちや怒りと無縁だった
穏やかなあの春が懐かしい
あれから徐々に力を蓄え
梅雨を過ぎ盛夏を迎えた今
厳しい暑さの中でも頑張れるようになった
弱かったとき自然から与えられた
幸せな恵みを思い出しはするが
戻らぬ時間を恋しがってはいられない
ただ周りの全てを美しく感じた
あの春の
自然への感謝の気持ちはこれからも
ずっと覚えていたい
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