月夜の帆船

さあ お話をしてあげよう
暖炉のそばに集まりなさい

古いことではないんだよ
お祖父さんから聞いた話だ

さみしがり屋の少年がナシオン広場で
素敵な友だちに出会った
少年はブラッドリィ 友だちはソニィ

あいつと関わらないほうがいい
クラスメイトが言ったけど
ブラッドリィは無視した
だってソニィは先生や両親が捨ててしまった
童話を持ってるから

ふたりは秘密の場所で遊んだ
それはもう使われていないプラネタリウム
星の下 ふたりは幾つも神話を数えた

来る日も来る日もふたりは一緒に過ごした
トム・ソーヤーとハックルベリィ・フィンのように
少年はブラッドリィ 友だちはソニィ

ある日突然ソニィが消えた
彼のいないプラネタリウムは星屑の墓場
ブラッドリィは二度と友だちを作らなかった

月の夜 帆船に乗ってブラッドリィは町を出た
別天地に向けて
彼を救いに来たシルバーマンと共に

辿り着いたのは社会から見放された流刑地
文明もなく野蛮だと人々が言う

けれどここは住人たちのパラダイス
自由に働き、笑い、生きている

ふたりは再会した 忘れ得ぬ顔
少年はブラッドリィ 友だちはソニィ

ほんの少し前の話だよ
人が自由に生きることを禁じられていた頃の

童話や神話が野蛮だと言われ
全てが管理されていた頃の

そんな社会から純粋なばかりにはみ出した
少年少女たちや罰せられようとしている人々を
逃亡させていたんだ

そう 月の夜帆船に乗せて
シルバーマン 彼の名は多くは語られない

21/03/08 10:52更新 / 香弥
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