声
声が聞こえた 声は幻想をさまし 私の声はふわふわと
宙に浮いていた 悲しくなって扉を締めた
私は怖くて黙りました
それでも私の声は無くなるわけではなかった
何も感じないわけではなかった
私のとり散らかった日常に見え隠れする
小さく他愛ない喜びの種を拾ったとき
かつて失くしたものを思い浮かべたとき
いつかすり抜けてしまう大切なものを
握りしめたとき 意図せず声は出てくるのです
しばらくして私は扉を少し開けてみました
やっぱり声を聞きたくなったのです
耳を澄ませると声は 楽しい うれしい 悲しい
愛しい 苦しい 憎い 腹立たしいと
いろんな感情を歌っていました
聞いたあとはどんな感情も出していい 目の前で
そう言われた気がして 私もあーっと発声練習したい
そんな気持ちになったのです
だからお礼を言わせて下さい
声をありがとう あなたの思いを聞かせてくれて
ありがとう どんな声もどんな思いも聞きたい
届けて下さい 扉を開けて待っています
私も声を出してみます
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