耳音(子守唄)

耳の形は人それぞれ

わたしの言葉はあなたには

どんな風に伝わるかな

ひとたびこの手から放たれると

雨風に揉まれ形を変えていくよ

だから私は自分の耳の形を

餃子にしてみたり

伸ばしてみたり

手を添えてみたり

この耳の骨が柔らかいように

柔らかく柔らかくしていたい

若かりし頃の母が布団の中で

眠れないというわたしの耳をよく触ってくれた

母の指のはらから伝わる感覚

安らぎというよりは

どこか 艶めかしく

あたたかな寂しさに困惑した

少しだけ 怖かった

それから わたしの耳は

その音に聞き耳をたてていく

その音を沈黙のままに

心の深い泉に沈めていく

それでもやはり

その音に安心して

知らぬ間に眠りについていたの







22/11/05 06:35更新 / 檸檬
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