薔薇の雲
川面に映る建物や樹木が日の光りに輪郭を揺らす
その川沿いに緑の広場があり
老舗旅館と神社前の石畳の道に通じている
その道をまっすぐに歩いて行けば
石壁が琥珀にうつくしい建築として街の人に愛された文化ホールがある
そこで開催されたコンサートに行ったあの季節は5月
その歌手の歌声は薔薇の吐息の
様に素晴らしかった
彼女の心臓から太陽が溢れ出すように
最後の吐息が薔薇になるような
その歌声に包まれる中
誰もが誰かを思って
コンサート終わりの夕焼けは
彼女の歌声に魅了された人達の
ため息がかげろうとなって
立ち上ったように美しかった
夕焼け雲が薔薇色に染まって
浮かび上がって
近くの神社境内横の道沿いにも
白 黄色 赤 ピンク
色々な色の薔薇が咲き誇っていた
こんな日は
きっとこんな日は
あの歌声の余韻で
私の心臓から太陽を溢れさせ
薔薇の様な歌を歌えたら
燃えるような
薔薇の雲を浮かばせて
きっと喜ばれてこその花束
わたしのひとりよがりの
トゲが刺さって泣く顔は
みたくはないな
夜が更ければ
闇に溶け消えてしまうけれど
全て見えなくなってしまうけれど
川の流れとともに
夜風とともに
眠りに誘う幸せな薫りだけ残す
そんな薔薇の様な歌を
今夜は夢みて眠る
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