鳶の声
鳶の鳴き声が聞こえると
時が海の方へ流れて、
潮騒が身体の中を吹き抜けていくようだ
ヒュールルルルルー
ふとこの鳴き声に
浮ぶ愛らしさ
二羽の鳶が旋回する姿が微笑ましい
ヒュールルルルルー
残暑に追い詰められる心身が
鳶の声に掬われしひとときに
耳を澄ませてくれるひと
太陽に背をむけた夜
月を見上げた
太陽に背を向けた夜
星を見上げた
本当を告げてくださいと夜が明ける
ヒュールルルルルーと
誰かが打ち上げた白いボールのように
ヒュールルルルルーと
見上げるだけでも夢をみた
命がみた夢の歌
命が感じた愛おしさ
愛しくもせいせいとして
鳶よ、飛んで、飛んでゆけ
ないて、歌って、連れていって
故郷の黄昏ひかる港まで
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