鳶の声

鳶の鳴き声が聞こえると

時が海の方へ流れて、

潮騒が身体の中を吹き抜けていくようだ

ヒュールルルルルー

ふとこの鳴き声に

浮ぶ愛らしさ

二羽の鳶が旋回する姿が微笑ましい

ヒュールルルルルー

残暑に追い詰められる心身が
鳶の声に掬われしひとときに

耳を澄ませてくれるひと

太陽に背をむけた夜
月を見上げた

太陽に背を向けた夜
星を見上げた

本当を告げてくださいと夜が明ける

ヒュールルルルルーと

誰かが打ち上げた白いボールのように

ヒュールルルルルーと

見上げるだけでも夢をみた

命がみた夢の歌

命が感じた愛おしさ

愛しくもせいせいとして

鳶よ、飛んで、飛んでゆけ

ないて、歌って、連れていって

故郷の黄昏ひかる港まで

24/09/20 22:48更新 / 檸檬
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