暮れゆく宇宙へ
いつもほら空は
少しずつ違った空模様を魅せてくれます
みどり深い海に 白百合だけが凛と咲き
風のない夕刻だったのでわたしは、
ブランコを漕いだ
あの空の積乱雲の輪郭は
サングラス越しにはハッキリと映りました
四国山脈の上にモクモクと浮かびます
大樹さまを取り囲むように鮮やかな夕焼け
大樹さまの肌を染める茜の金色
暮れゆく森に蝉時雨から鈴の音たちに変わるとき
ライターをするような蝉の最後のひとこえが
「ジッ」と堕ちた
わたしの心にも「ジッ」と
響いた
なにもかも ジッとしていて
わたしは暫くジッと動けなかった
だれもかれもが 鳴いているように
聞こえた 白昼
だれもかれもが さけんでいる
ように聞こえた 白昼
ジッと動けなかった
だれもかれもがジッと待っている
ジッと熱をおこそうとしてもつかず涼やかに
暮れゆく時を
ヤマモモと藤の木が支え合っている林野
藤の木の枝が、楓にまで伸びている
短い梅雨の間に楓の苔、緑の肌に
わたしのイニシャルを刻んだが
夏の盛りの今はもう消えていた
日暮しを誰かと聞いていた気がした森の中に
ジッとジッと
マッチをするような蝉のこえ
わたしの心には何かが小さく灯っていた
あのひとが教えてくれたことがふと浮ぶ
わたしは家路を急いだ
暮れゆく空模様に魅せられながら
いつのまにか鈴虫たちの声が立ち込めて
星たちと交信をはじめようとしている
そろそろ宇宙へ還るときが近づいている
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