歌は束の間の優しい雨音

あたたかなお布団がある

そのありがたさに身を委ねた

嘔吐物を半泣きな自分で拭いた、

あたたかなお布団がある

そのありがたさに身を委ねた

水を少しずつのみ

毒素を排出する

それが出来ることが生きることだと痛感した

水とライフライン

そのありがたさに身を委ねた

人手不足の世情の濁流を泳いだ
雨にもウタレタ 

でも帰ってくれば我が家の愛おしいお布団に

抱きしめてもらうことを考えるとなんとか

耐えられないことはなかった

そう、お布団に入ればきみに抱きしめて貰えるから

必死で乗り切った

週末にまでやっと辿り着いたんだ

四面楚歌みたいなギリギリの気持ちからの解放

車の中で暫く降る雨を見ていた

やっとなんの気掛かりもなく

深く眠れそうだよ本当に深く眠りたい

健康のありがたさに身を委ねたい

花の好きなあの人の体調は良いだろうか

車の中の雨は優しい音色で

あたたかくって泣けた

歌は束の間の優しい雨音

フロントガラスに落ちた雨の揺らめきに

蝶々がゆっくりと舞ってみえたから

心あやされ わたしは笑った

その蝶々はあの日

わたしが梅の花の下で見た蝶々

飛ぶたびに放出していく原子が揺らめいて

星屑となっていく

歌を聞き 夢をみて 消えてゆく

そのありがたさに身を委ねた

雲のように生まれる

雲のように消えゆく

そのありがたさに身を委ねた

歌をうたい 夢をみて 消えゆく

そのありがたさに身を委ねたい

いつか本当の解放は原子が放出するように

やってくるのだろう

そんなイメージの中でわたしは何度も

きみの歌をきき、夢をみて、信じることは

止められないでいる

雨音が響く車の中で

なんてこともない夢の話をいつまでもどこまでも

聞かせてほしいよ、

あなたの手に確かなあたたかさを感じた

繋いでいるこの手
その今を
この胸の奥に暫し留めるように

そんな思いの粒子が少しずつ

優しい雨になって

晴れた日にはやがて雲となる

いつかふるさとである宇宙へ

少しずつ放出されゆくその原子のひとつに

なっていけるんじゃないかなんて

バカみたいな夢を見続けられる

そのありがたさに身を委ねた

血肉となる

きみのたったひとつの情熱を信じる

待っていてね

少しずつ きっと また

歌を聴き 夢をみて 糧として

歌をうたい 夢をみて 糧として

いつかきみと蝶々みたいに原子の揺らめきとなって

あの空へ消えゆくまで

歌は束の間の優しい雨音

そのありがたさに身を委ねていたい



24/02/23 19:10更新 / 檸檬
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