種を蒔く人
〈短歌十七首〉
白鷺が羽根を広げ
川面に映る山々をも眺める鏡
渇きに雪解けのひと雫
白い麗山をこの目に焼き付ける
南天 菜の花 金柑と
季節のバトンが華やかなる庭先
泣き濡れた椿たちの艷髪の残り薫に後ろ髪をひかれて
きみの子守唄が聞こえる
ハッシャバイ(hush-a-bye)
静かに眠れ、ルルラ
ハッシャバイ
雨音は
春咲く花達の息吹零れて
色彩が聞こえだす
自転車のスリップに気をつけて
春雷の中をかけてゆくあなたへ
梢についた水滴たちは
ため息ふかいこの心を満たして
枯れ草のしたからクローバー
沢山の露を抱えてわらっている
白とピンクの梅が雨に歌えば
曇空から桃の節句へと
二人なら
呑気な顔して
同じ夢をみられる偉丈夫になれる
かまわない
ゆっくり待つから整えて
咳き込むときはお互い様だ
きみの歌
恋の種が運ばれて
わたしの土壌に爽やかな風
お皿ごと抱きしめ
根菜を噛み締めて
今日の失敗を振り返る
雨が沁みた枯野
土の香り立ち
種蒔きの計画も立つ
薫る人
今頃何を耕すか
土の器を愛するその手で
火傷の跡さえ君なんだありのまま君はわたしの愛おしい人
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