飾り窓に贈る絵葉書

冬の海に備えて
浜辺にはテトラポットが

高く敷き詰められていた

流木が沢山打ち上げられ

浜辺は隆起している

乾いた枝の上をパキパキと

踏みしめ歩く

塩の焦げた匂いはなかった

潮風に猫じゃらしが揺れた

君の歌が波音に混ざり

心の帆を風にふかせれば

あのひとつふたつみっつと

等間隔にならぶ

水鳥雲の羽ばたきに

絵筆が薄桃色をはしらせる

白月

夏の痛みなど空に浮かばせて

凛とした姿


翡翠の煌めきを放つ冬の海の上に


夕刻のチャイムが
ももいろのため息を吹き掛ける


テトラポットの隙間に波が寄せては返し


水溜まりの流れが
ささやかな水琴の音を奏でる


翡翠に似た石や


漆黒に光る小石が目にとまり


手に取りしばらく眺めてから


水溜まりにポチャンと返した


テトラポットの囲碁板に


波に置かれる小石が光り


星座が並ぶ


あの人とあの人が結ばれて


そしていつか私もきみのとなりへ


冷たい風が少しずつ夕日の


金粉をはこんで


白月の糊代に


散りばめられていく


少しずつ金に染まりゆく


きみが笑う


カップルたちが寄り添い


釣りびとは仕舞いをはじめる


五時のチャイム


帰り道の海岸線


バックミラーの絵葉書は
オレンジに染まるせかいと
漆黒の人影が動く


美しいひとつの影絵が
静かに待つ冬の到来を
あたたかく灯していく















23/11/26 00:29更新 / 檸檬
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