秋空の記憶
青天に流れる秋雲
風に運ばれしあの頃の翼かな
暖秋に浮かぶ大きな雲に梢
たそがれの桃色綿菓子
ページをちぎったあの人の一部分
鼓動をもらって今日も生きる
青き記憶がよみがえり
夜はまるであの教会への
扉が見える
一輪のカーネーションを買い
聖母に渡した青白き旅立ち
花はみえぬが何処からか
薫り運ばれし
風の通り道に立つ
どんぐりの落ちる音
クスノキの心拍聞こえる
静かな小径
落葉樹は
冬の太陽と手をとるために
あの子と遊ぶために
朱い葉と楓(ふう)の実が
夕日に光れば
秋空イルミに魅せられる
秋空に翼なくとも還る日を
ゆめゆめ歌う心
吾は知る
今夜も見上げよう
部屋の電気を消し
きみの瞳がまばたく時を
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