浜辺のソフト

浜辺のソフトは風に溶け


浜辺のソフトは涙の味か


心揺さぶるあの風に


愛のソフトが溶けていく


急いで食べなきゃ汚れるよ


あんまり風がふくものだから


笑っちゃうんだ


潮風の味か涙の味か


浜辺のソフトは少ししょっぱい


浜辺にくれば売ってある


けれどこの味は売ってないんだ


あなたの言葉でこんな味


あたたかな白い木綿にくるまれた


流れ流れて汚れても


いたずらな季節の風のせいにして


くるくる回る風見鶏


洗濯しては干し上げた


ゆらゆらゆれて 

優しく優しく揺れる木綿が手をつなぐ


魂を震わせて昇る朝霧や

窓を開けバルコニーヘ出た瞬間の

星月のきらめきに心が
羽を持つように

木綿の羽ばたきを待つだろう

黄昏時には足を止め 

夕日に気持ちを溶かすだろう

あなたの言葉の持つ熱が確かに灯る心の芯


潮騒に散らせてみてもそれでもなお消えないで確かに灯る灯火に


なすすべもない心のありさま


太陽が傾き白く透き通った月に涙を落とす


月の波紋が絶え間なく打ち寄せる波に宿る

心揺さぶるあの波に

愛のソフトが溶けていく

心揺さぶるあの波に

流れ流れて汚れても

それは祈りにも似て美しく胸に残るのだ

だから私は そっと月が訪れて夕日が海に溶ける頃

あの潮風

波の音をずっと聞いていたいと


今日も明日もまた浜辺のベンチに
一人そっと座るだろう


浜辺のソフトは風に溶け


ゆらゆらゆれて 手をつなぐ


白い白い木綿の旗




23/09/18 07:42更新 / 檸檬
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