ススキが丘
今年も家の近くの
雑木林が風に揺れ
ポトッポトッと
どんぐりが落ちる音が
響きはじめた
ゆっくりとリズムを刻む
静かな午後
あたたかい飲み物を
ポットに入れて
あの丘へ
カサッパリッと
木の葉を踏む度
気持ちもほぐれて行く
丘の上には
ススキが一面に
秋の柔らかな光を浴びて
風にキラキラ ゆらゆら
揺れている
白銀の髪をたなびかせ
優雅にこっちへおいでと
手招いている
白光りする
白銀の世界へ
蝶のように迷い込んで
戯れよう
丘の向こうから波の音
さよならを言えなかった
あの人のもとへ
流れ着く海風にのって
どこか懐かしいような
白銀の燐光と揺めきを
眺めていると
だんだんと
鼻腔が熱くなって
喉のヘンが苦くなり
涙がとめどなく
まばたきの度に
頬をつたう
丘の向こうから波の音
秋空と
ススキが
優しく揺れるだけ
秋の日が沈む頃
夕焼け雲は
細長い小舟の様な
茜色をぼんやりと
浮かび上がらせた
茜色に染まるススキが
「もう お帰り」
と優しく手を振った
晩秋の光景を胸に抱いて
どんぐりの音と
木の葉の音を聞きながら
家路を急いだ
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