稲穂の月道
黄色の稲穂が実りはじめ
一面きみどりいろの田畑の日暮は
香ばしい香り
稲穂の海、その水平線に添って
遠くには
通り過ぎる車のヘッドライト
こうこうと
浮かぶ大病院の窓明かり
すぐ傍に
私の足元には
月が用水路に映ってちらちら
揺れている
君の心みたいに
まだこうべを垂れないで、
上へと手をのばす稲穂は
私の気持ち、
今夜の月に届くかな
この夏に何処まで届くかな
田畑を眼下にツバメが空を舞う
獲物を見つけたのか
刺すように翼をすぼめて
逆落としに直滑降をする
稲妻に射ぬかれて
閃光が走る時を越えて
思いが実り溢れていく
もう手を伸ばせなくなっても
その重みに微笑みながら
真昼の暑さに耐える魂の手綱を
離さずに
夜風ふく安らかな
この時を待ちわびるだろう
いつかうつむく日が訪れても
きみはいつの夜にも
優しく水面に揺れて微笑んでくれているのだから
いつか刈り取りの
収穫の時を見守っていて
黄金に輝く十五夜の日まで
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