芽吹き、羽ばたき、春の夢
花曇りに覆われ月の様に淡く光る夕日
木蓮の白い蕾が膨らみはじめている
白い文鳥の息遣い
小高い山には
街の冬枯れの梢からはなれ
重く茂る常葉樹に枝葉を耕し巣をつくる親鳥が私の足音に気づいて飛び立っていった
遠く山の峰の上に沿って広がる雲海は
遥か向こうの知らぬ世界へ誘うように心に羽衣を纏わせる
夕焼け色の雲海の下には桃源郷が包まれている夢
色鮮やかな鸚哥(いんこ)も羽ばたきをやめ手のひらに抱きすくめられ落ち着いているように
鼓動より静かな呼吸をしながらも
大空を見ると、本能にしたがって羽ばたいてしまうのだろう
手のり鸚哥の
色鮮やかな空色 桃色 黄色に
山吹き色
今まさに芽吹かんとする
羽ばたきに似た開花前
山のあちこちにまろやかな微笑み
それは君の手に包まれるような
今でしかない優しい表情を
留めていたいけれど
季節の風に一瞬の羽ばたきは必ずやってくる
銀色に光ってきたあの雲海は龍の背か
龍の足元までいける様な
それは素敵な夢をみていた
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