春からの葉書
遠く日本海から
深い蒼色の海岸線が続く写真付の葉書が届いた
この海では冬の間は白鳥の群れが
羽ばたく様子が見られるのだと
書かれてあった
寒の入りと名前を与えられた日
確かに寒くなった
昔の人は名を付けて
この時期、寒さの極みが来てから
春がくること教えてくれる
外の風景も少しずつ
束の間の冬麗の日射しに春の気配をみせてくれている
緑柔らかなクローバーが
モコモコと生えてきて
ススキの穂をそっと摘まんで
穂先までスライドさせると
風に乗ってホロホロと
粉雪のようにまって地に堕ちていく
宇宙?
から吹く春風にのって
ベンチにすわると小さなススキも
頬の高さに揺れてこんにちは
日向ぼっこしましょう
一緒にね
名もない命を大樹の下で感じる
割れたドングリが散らばって
楓の枝に沢山の楓(ふう)の実が
つらさがって
イガイガとして丸い形が
ゆらゆらとかわゆし
どこからか吹く春風に乗って
心の厚着を脱ぐように
一枚一枚花開く
名もない花になれたらいいな
名もなき、言葉にならない繋がり
それ故に心を守られて
解決なんかできなくて
沈黙が続いて
夜道を、たださ迷い歩くとき
闇が極まってやがて光がくる
街灯りと薄明の蒼にまじる赤よ
ブルーモーメントの中の暁
澄んだ寒さの中に灯っていく
砂利を歩く音が心に響いて
涙がながれてお腹が鳴る
ご飯粒
にぎり飯
焼き海苔の香ばしさ
七草の根の土が心に香る
物言わぬ命に
この身がおこされ
あたためられる
のぼるだるま朝陽も
七転び八起きで私をおこす
寒極まった、だからやがてくると
春からの葉書を大切にしまう
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