冬の公園

木枯らしの吹く公園のベンチに

無頓着でいられる限りすわって

ブランコを漕ぐ少女をみていた

目の前に、

空っぽのペットボトルに砂が入っている

その重みで立っている

失くしたもの

変わりに得たもの

ただそれだけが

あるがままに立っていた  

木枯らしの吹くベンチに座ると

失くしたものがさらに

向こうへ飛んで行った

ブランコの少女の髪が揺れる

砂の入ったペットボトルが

悲しげに空っ風に吹かれて倒れた

かさぶたがまた剥がれて

傷跡が真っ赤な少女の膝小僧

真っ赤なトマトに頑張れと

砂を噛むよにつぶやき泣くよ

木枯らしの吹く公園のベンチに

無頓着でいられる限りすわって

何を失くしたのかも忘れそうに凍えた

ただ 生きている

ただ それだけになった

私の空っぽの砂のこぼれた心は

ただ それだけになって

かじかむ手に

生きるための言葉を探してしまう

愚かなことに
ただ それだけになった

ベンチから立ち上がろうと

こんな言葉さえ浮かぶ図太さよ

「どうか元気でいてくれよ」

木枯らしの吹く公園のベンチで

ただそう思って風に吹かれた













22/11/22 22:50更新 / 檸檬
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