あめ玉
おっちょこちょいの
魔女が落としていった
魔法のジュエリーは
どれも不思議で
おかしな味
ぱくりと口に頬張ると
とたんに魔法にかけられて
別の世界へ旅するの
フルーツの味は
昔読んだ絵本に出てくるような
メルヘンで懐かしい
おとぎの世界
梅味は
古都を思わせる
和の世界
塩味は
潮騒響く
魚たちの都
海の世界
チョコレート味は
初恋に胸ときめかせる
青春の世界
コーヒー味は
ちょっと切ない
大人の恋の世界
色んな世界に
招待されるの
でもね
その世界はずっとは続かない
魔法のジュエリーは
いずれ口の中で消えて
なくなってしまうものだから
その魔法の世界も
終わってしまうの
線香花火のように
まばゆく光ったかと思えば
消えてしまうように
余韻を残して
消えてしまうの
余韻すら消えてしまうと
現実があまりにも物足りなくて
つまらなく感じるの
現実から逃避したくて
ついつい
一つ
また一つと頬張り
魔法の世界に浸って
つかの間の休息を楽しむんだけれど
気がついたら全部
なくなってしまったの
おっちょこちょいの魔女さん
また
落としていってくれないかしら?
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