霧の露
あなたは突然
私の目の前に現れて
私の心を
あなたで覆い尽くした
周りが見えなくなるほど
霧に取り囲まれたように
つかみ所のない
不思議さのあるあなたに
心惹かれて
あなたに触れたくて
あなたに向かって手を伸ばした
何度も何度も
でも
空を掴むだけ
じれったい
それがいっそう
あなたへの執着心をあおり
私はあなたの虜となった
そんなことを
幾度となく繰り返して
気がつけば
あなたは
すっと消えていた
何の前触れもなく
徐々に
霧が晴れたように
自分自身と
自分の状況が見えてきた
私はあなたに心狂わされた
周りには相当滑稽に見えるほどに
霧に包まれていた頃は気付かなかった
私の愚行
私のあなたへの想い
届いても相手にもされないのに
その他大勢への対応と同じく
普通に対応されるだけ
愚かなことだ
無駄なあがきだったと
気付きもしないと
霧が晴れてから気付いた
いや
愚かだったとしても
虚しさは
不思議とない
霧に包まれていた頃の思い出も
あなたへの想いも
霧の露のように
美しいと感じる
あなたという霧の残した露は
現実のそれのようには
消えはしないだろう
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