命の期限
もう8時だぞ?
そう言われて目が覚めた
出発まで30分
どうしよう、食べる暇なんて・・・
と思いつつ
父が用意してくれた朝食を食べた
平日の朝食はいつも父が用意してくれる
当たり前の日常
眠い目をこすりながら
作ってくれている
お父さん、死んじゃやだ
ふと蘇った子供の頃の記憶
余命宣告から10年も経って
ついつい忘れてしまう
命の期限
残された時間を大切になんて
どうすればいいのよ?
家族で出かける暇なんて
親は共働きで毎晩遅いのに
ただでさえ、いつも一緒にいる時間なんて少ないのに
それでも
父は変わらず柔和な笑顔で
ただ、毎日をいつも通りに過ごしていた
帰ってきたら
疲れているのに家事も手伝ってくれて
その日にあったことや
他愛のない冗談を言ったりして
一緒に笑ってくれている
父の答えはそれだった
実にシンプルな答え
それがいつまで続くかなんて気にしない
父らしい答えだと思う
だけどいつか来るんでしょう?
そのときが
そのときがいつか来るなんて考えたくない
いなくなった人はみんな思い出の中で生き続ける
だから寂しくない
そんなの強がりの建前なんだから
まだ、思い出の住人にならないで
いつも笑っていたね、なんて
思い出をまだ語りたくない
もっと私と思い出を作っていってよ
そんな想いの波をせき止める
それで精一杯の朝だった
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