愛せない人
私は祖母が嫌いだった
口を開けば
母の悪口
自分の自慢話
とにかく
言うことが
聞いていてつまらない
下らない内容ばかり
とにかく自分が中心でないと
気が済まない
面倒くさい人
昔からそうだった
他人への人当たりは良いほうで
人気はあったのかもしれないが
内面を知っている私は
どうしても好きになれなかった
何より
「悪い人だ」という認識が
根強かった
何せ
重度の認知症の祖父に対して
強く当たり散らかして
言葉による暴力を
日常的に繰り返していたから
両親は
年齢がいっていて
介護が辛いから当たりたくなるのだと
容認し
それを私に言い訳して
黙認させた
両親は共働きで
老老介護の手助けになることを
したことは
記憶にある限りほとんどない
せいぜい
通所に通わせて
介護負担を減らそうとはしていたが
ほぼ
手出しはしていなかった
そして
祖父の介護度が上がるごとに
祖母の当たりもエスカレートしていった
両親が言う仕方ないことを
私は何となく心地悪いものとしてとらえ
祖父をいじめる祖母が
嫌いになっていった
いじめる人を
好きになる子どもなんているはずがない
祖父が亡くなり
祖母はいっそう
弱くなった
身体的にも
精神的にも
当たる相手が身近にいなくなり
独り言や鼻歌が多くなった
最近ぼけが進んで
おかって仕事は任せられる状態ではなく
ガスの元栓を閉めなければ家を空けられない
排泄のコントロールもできなくなり
下の世話もしなければならなくなった
家族に世話になるようになっても
この人は感謝の気持ちを表すことはない
それどころか
意固地になり
自分がますます何も出来なくなり
忘れていくことを嘆くばかり
そんな彼女を
私は何の感慨も抱かずに
冷ややかな目で見つめている
私は
祖母が嫌いだったが
いつのまにか
どうでもよくなっていた
最低限の関わりをするようにはしている
いや
できていないかもしれない
話しかけられるのも
転倒されるのも
使い捨ての汚れたおしめを
洗濯機で洗われるのも
することなすことが全て
うっとうしい
祖母のキャラクターには慣れたが
その代償に
関心を失ったらしい
愛すべき人ではないと感じているからなのだろうか?
彼女は
やっかいなただの同居人
それ以上の関係はない
だって
信頼できる相手でもないし
尊敬も出来ない相手だから
そう思っている私も
私が嫌い
だって
過去の祖父母に対して
関係を修復させようと
強く働きかけなかったし
自分がここまで
無関心な相手に対し
心から優しく接することが出来ないから
偽りの笑顔を浮かべて
楽しい振りして話すのも
億劫に感じる
愛せない人がいたら
あなたはどうしますか?
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