月を隠す雨雲

この頃
ずっと雨が
続いている

おかげで
夜空の月は
雲に覆われ
見えないでいる

貴方と私は
遠く離れた土地にいる

そんな私たちが
共に眺めることが出来るのは
夜空に輝く月だけだ

空の月をぼんやりと眺め
「貴方もこうして
眺めているかしら?」と
しんみりと思いにふける

それがたまらなく
切なくて
貴方が愛おしくて
胸が苦しくなる

貴方と私を
唯一繋いでくれる
夜空の月

それを
ここのところ
空の神様は
隠してしまう

どうしてこんな
いじわるをするの?

空に問い詰めても
雨雲から声は聞こえず
ただ
雨が静かに降り注ぐばかり

虫の声が
鈴のような音を立てて
反響していく

空の無言の応え

もしかして
私の代わりに
泣いてくれているの?

月を見る度に
貴方を想い
心の中で
静かに涙を流している
私を見かねて

空は
私を気にかけ
「たまには忘れるように」と

そんなこと
簡単にできるわけない

でもね
ありがとう

私を気遣いつつも

「たまには忘れるぐらいの
強さと余裕を持ちなさい」という
叱咤も含まれているかしら

貴方と私を繋ぐのは
月だけではない

目に見えない
心と心の繋がりが
ちゃんとあるはず

止まない雨はないから
いつかまた
月が夜空に見えるまで

今しばらくは
辛抱するわ



21/09/03 21:03更新 / アキ
作者メッセージを読む
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c