銀杏の夫婦
立派な銀杏の木が
2つ並んで
そこに立っていた
いつも通りかかる
近所の公園にある
2本の銀杏の木
毎年、秋になると
太陽の光をその葉へと
一身に取り込んだように
見事な黄金色に染まる
落ちた葉っぱが
公園の地面を埋め尽くす
それを君は
「まるで絨毯のようね」と言ったね
そこに
ころころと
あちこちに転がっている銀杏の実
「銀杏の実がなっているということは
この2つの木は男と女
つまり夫婦だね」
そう僕は呟いたっけ
そうしたら君は
「木の世界にも夫婦があるのね
なんだかロマンチック」と言って
微笑みながら銀杏を見上げたね
そんな君が
とても愛おしく思えて
だから僕はこんなことを言ったんだ
「この銀杏の夫婦のように
いつも、当たり前のように側にいて
支え合う
そんな夫婦に君となりたい」と
そうしたら君は
銀杏から僕に視線を移して
照れくさそうに言ったね
「この銀杏の夫婦が
毎年色づいて実をならして葉を落とす
その景色を毎年一緒に見てくれますか?」
それは君の
Yesの返事だった
その日を思い返している
今の僕の隣に
君はもういない
けれど
君は僕に見えないだけで
今も僕の手を取り
側にいてくれているんだろうね
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