愛情と愛着は違う

兄はまた
何も告げずに
ふらりと行方をくらませた

どうせまた
例の先輩の家だろうけれど

家族の心配なんて
気にもしていない
いや
出来ないんだろうな

愛情がなんなのかも
分かっていないんだろうね

ペットの猫を溺愛し
「こいつらは俺が愛しくて仕方ないんだ」と
しきりに言っているけれど

本当は愛されたいんでしょ?
でも
愛し愛されることが
どういうことなのか分からない

だから
ゲームや本に逃避して
心の飢えや渇きを誤魔化している

大好きな猫を可愛がっているわりには
自分のしたいことを優先して
餌をあげようとしないし

ほら
今日みたいに
どこかへ行っていなくなる

それが物語っているよ
それが愛情ではなく
愛着だって

両者は何が違うのか?
それは
「責任」が持てるかどうかだ

愛情は
愛しいもののために
すべきことを果たす愛だ

一方、愛着は
好きではあっても
結局自分の都合が第一で
無責任で自分勝手な愛だ

前者は
相手のために責任を果たす

その根幹に
きちんとした愛
つまり
「思いやり」があり
それが原動力となっている

後者には
「思いやり」があったとしても
自分の「我」が表に出てしまっている

責任のある愛は
相手を支え、守り
相互にとって健全な関係をもたらす

無責任な愛は
その逆である

兄は愛し愛されることが何なのか
分かっていない

そんな兄に対し
それとなくラインで
「カボチャの炒め物が大量に残っているぞ」と
書いて送る私

兄に常識を説いたとしても通じないだろう

兄は居場所を求めている
だから
居場所となれる存在でなければ
言うことを聞いてはくれないだろう

無条件の愛なんて
私も分からない

それで何もかも救われるなんて
思っていない

私は親ではないから
教育は出来ない

私に出来ることは
居場所を作ることぐらいだろう


20/11/20 20:18更新 / アキ
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