祖父に尋ねることができなかったこと

私の亡くなった祖父は
戦争に行って
戦地で戦って
生き延びて
帰ってきた人だ

多くの人は
普通ならば
「帰ってきてくれて良かった」
そう思うはずだろう

けれど
私はふと
考えてしまう

戦地で祖父は
人を殺したのか?

そうしなければ
自分が殺されてしまうから
仕方ないのかもしれない

けれども
誰かを殺すという行為は
戦争のない日本では
非日常的なことで

もし、誰かが誰かを殺したならば
ニュース沙汰になる

平和とされる日本で
人を殺した人は犯罪者と見なされ
世間から非難される

もちろん
その犯罪者達は
それ相応の悪行を働いたのだろう

だから
裁かれるのは当然の報いかもしれない

だが
祖父のように
戦地に赴いた兵士達は

祖国や
家族や恋人、友など
愛する者達を守るため
信念を持って戦った

そのために
敵国の兵士達の命を奪った
もしかしたら
敵国の住民の命も奪ったかもしれない

殺し合うこと自体に正義はないと
現代人である私は言うことができるが

果たして
彼らは犯罪者なのか?

ただ言えることは
人を殺さざるを得なかった
時代に翻弄された彼らは

加害者でもあり
被害者でもある

その当時
守るべきものを守るためには
何かを奪わなければならなかった

奪う対象は
土地や資源だったり
数多の人々の命だったりした

その相手の国にとっても
大切なものであるはずなのに

お互いの大切なものを
守るために
奪い合い、殺し合う戦争

その時代においての
正義と悪は
現代の常識に当てはめることはできない

一方
現代社会では

争って奪い合うよりは
分け合うこと
助け合うこと

それが大切であるという概念が
浸透しつつある

戦争がいかに愚かな行為か
過去の過ちを認め
世界がそれを学習し始めている

祖父が生きて帰ってきたとき

一方では
遠い国で
祖父に殺された兵士の家族達が
涙を流していた

私は祖父に
尋ねることができなかった

戦争で人を殺したのかと

祖父が生きていていたら
どう答えただろうか?

分からない

祖父が生き延びるために
死んでいった兵士の数

いや
数ではないだろう

戦地に散っていった命達のためにも
生き残った人達は
戦争の惨禍を忘れずに

平和のために貢献して
生きていかなければならない





20/08/16 23:04更新 / アキ
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