背中
この背中を私は忘れないだろう
あの日、ふと思った
何気ない散歩の途中で
赤いチェックのワンピースに赤いサンダル
歩き始めたばかりのぷくぷくとした腕や足
もうずいぶんとたつのに
はっきりと覚えている
なぜあのうしろ姿を、あの背中を、鮮明に覚えているのだろう
たくさんの記憶がある中で、時々ふいに現れる背中
隣では、娘が笑顔で運転をしている
自信に満ちた笑顔
たくさんのことを乗り越えて、やっと現れた笑顔
もしかしたら…
あの時、私は「母」になったのかもしれない
この背中が大きくなるまで、必ず守ってみせる
そう覚悟した瞬間だったのかも…
娘の背中は大きくなり、しっかりとした足どりで、一人で、歩き始めた
お互い、笑顔がこぼれる
未だにあの背中はふいに現れる
そしてこれからもずっと現れるのだろう
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