夢の記録
柵越しには波立つ海
地は白く積雪を纏い
空は月だけが顔を出して
吹き荒れる風とまばらな雲
そんな夜
どこからともなく現れた猪の親子から
逃げるようにまっすぐ駆け抜けていた
赤いリードで柵に繋がれた犬と
そこから離れていく老人を追い越した
瞬間的に捨てられたと悟り
犬の元へ駆け寄る
飼い主が残したメモには
誰か育ててくださいの文字
捨てられてしまったの?と犬に問うと
私の目を見つめながら頷いた
一緒に行こうと
犬のリードを手に取って
風の中を一目散に走った
どこから現れたのかもわからない
商業施設を見つけて
犬のご飯を買うことにした
何歳?と問うと
犬は3歳と教えてくれた
私の家はペットが禁止だから
明日には別のところへ預けないといけないと
犬に伝えた
犬は静かに頷いて
美味しいご飯が食べたいと言った
お水を飲む器に
暖かい毛布
色々揃いはするけれど
なぜか犬のご飯だけが見当たらない
商業施設を彷徨ううちに
犬とはぐれてしまった
どこにいるのと探し回って
「水月堂」という和菓子屋さんの前で見つけた
ふわふわのほっぺを撫でた時
少し尻尾が揺れたのに
揺らしてないよって照れ隠ししてた
水月堂の隣はドラッグストア
ここならきっとご飯売ってるね
そう犬に言って笑い合ったところで
目が覚めた
名前を聞かなかったこと
名前をつけてあげなかったこと
起きてから後悔した
あの芝犬がとても恋しい
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